「年金制度、正直仕組みがちゃんと理解できていない…」という方は、意外に多いのではないでしょうか。
社会に出て就職してからは当然のようにお給料から年金保険料が天引きされているので、自分で年金制度に加入したという実感がいまいちわかないというのが実情かもしれません。
1つの企業に定年まで勤め続ける…という方であればそれでも大きな問題はないかもしれませんが、転職や独立開業などのイベントが重なると、手続きを適切に行っておかないと「年金に加入していると思っていたら、実は加入していなかった」という状況になってしまう可能性もあります。
安心して生活できる老後に備えるためにも、年金制度の基本的な仕組みについて理解しておきましょう。
◎職業によって加入する年金制度は異なる
日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金の2つがあります。
国民年金は20歳以上60歳未満の人すべてが加入する義務のある年金制度です(職業についていない人も加入しなくてはなりません)
厚生年金は国民年金に加えて、将来的に割り増しで年金を受け取るために加入する年金制度です(ただし、条件を満たす場合は加入は実質的に強制となります)
厚生年金に加入していて保険料を支払っている人は、国民年金の保険料も支払っていることになりますので、老後には国民年金と厚生年金の両方を受け取ることができます。
・厚生年金はサラリーマンの人のための年金制度
厚生年金はいわゆるサラリーマン(勤め人)の人だけが加入することができる年金制度です。
保険料の負担は勤務先企業との折半となりますが、受け取るお給料の金額が大きくなるほど保険料の負担額は大きくなります。
厚生年金保険料の納付は勤務先会社が毎月のお給料から天引きして全従業員の分を一括して支払うのが普通です。
なお、アルバイトの人も正社員の人と同様に厚生年金に加入できる可能性があります。
具体的には正社員の人のおおむね4分の3以上の勤務時間、勤務日数がある場合には厚生年金に加入できます。
ただし、厚生年金に加入するためには勤務先の会社に手続きをしてもらわなくはなりません。
社員が厚生年金に加入することになると勤務先会社にも保険料負担の義務が生じる(厚生年金保険料は会社と従業員が折半して支払います)ため、法律上は従業員を厚生年金に加入させる義務があったとしても気づかないふりをして加入させない会社が多いというのが実情です。
アルバイトの人で、厚生年金に加入したい場合には会社任せにせず、加入条件を確認した上で会社に対して積極的に働きかけていく必要があります(本人が何もいわなくてもアルバイトの人を厚生年金に加入させてくれる会社は良心的といえます)
・個人事業主や主婦、20歳以上の学生は国民年金
厚生年金はサラリーマンの人のための年金制度ですので、サラリーマンでない人は加入することができません。
厚生年金に加入しない人は国民年金にのみ加入します。これには個人事業主や20歳以上の学生の人、主婦の人などが該当します。
なお、個人事業主の人は事業を法人化して自分は設立した会社の役員となることで厚生年金に加入することも可能です。
・国民年金保険料の金額はすべての人が一律
国民年金の保険料は収入の金額によらず誰もが一律の金額を負担しなくてはなりません。
国民年金保険料の金額は平成29年度は月額16900円となります(ここ10年ほどは、毎年月額が300円ずつ程度上昇していっています)
ただし、学生の人は学生である間は年金保険料支払いを待ってもらう(免除ではありません)ことができますので、必要な場合は手続きを行うようにしましょう。
国民年金についての手続き窓口は市区町村の役場です。
また、主婦や主夫の人は配偶者が厚生年金に加入している場合には「第3号被保険者」として保険料を負担しなくても国民年金に加入することができます(厚生年金に加入するのではありません)
注意点としてはこれまでサラリーマンであった夫が会社から独立して個人事業主となるケースです。
この場合は夫と一緒に妻も国民年金保険料を支払わなくてはなりません。
つまり、独立した後には2人分(平成29年であれば16900円×2人=33800円)の保険料を毎月負担することになります。
<まとめ>
以上、年金制度の基本的な仕組みについて解説させていただきました。
サラリーマンとして仕事をしている方であれば厚生年金や共済年金(公務員の方の場合)に加入しているはずですが、勤務先企業の人事総務担当者が手続きをきちんと行ってくれないとあなたが将来的に受け取れると思っていた年金が少なくなってしまうとい可能性もあります。
あなたが毎月保険料を納めている年金は、あなた自身が将来受け取る権利のあるお金です。
会社がきちんとやってくれているだろう、と他人任せにすることなく、自分がどの年金に何年間保険料を払っていて、将来いくらぐらいの年金を受け取れるのだろうかということを確認しておくことが大切です。
なんだか心配になってきた…という方は、本文で解説させていただいた年金制度の知識を参考に、加入期間の確認などを年金事務所に対して行ってみると良いですよ。