日本では、成人の国民すべてが何らかの形で老後に備えて年金制度に加入するという形になっています。
ただ、「国民年金や厚生年金ってよく聞くけど、違いがいまいちよくわかっていない…」という方ももしかしたらおられるのでは?
学校を卒業して企業に就職した人は、勤務先の会社が年金加入の手続きはすべてやってくれますし、保険料は毎月のお給料から自動的に天引きとなるので、「自分がどの年金に加入しているのかよくわかっていない」という状況になるのも無理はないかもしれませんね。
ここでは国民年金と厚生年金の違いについて理解しておきましょう。
国民年金と厚生年金は、以下の3つの点で違いがあります。
・加入できる人の違い
・保険料の支払い方の違い
・将来的に自分や家族が受け取れるお金の額
◎厚生年金は「勤め人」だけが加入できる年金制度
まず「加入できる人の違い」についてですが、厚生年金は勤め人(一般的にいうサラリーマン)の人だけが加入できる年金制度です。
個人事業主の人や、学生の人、主婦業の人などは厚生年金には加入することができません(これらの人は国民年金にのみ加入します)
多くの人の場合、学校を卒業して企業に就職すると同時に、厚生年金に加入することになります。
・アルバイトの人でも厚生年金に加入できることがある
なお、ここでいう「勤め人」というのは必ずしも正社員という意味ではありません。
アルバイトとして働いている人であっても、1ヶ月のうち一定の勤務日数を満たせば厚生年金に加入できる場合もあります。
具体的には、正社員の人の1日の所定労働時間の4分の3以上働いている人で、1ヶ月の労働日数も正社員の人の4分の3以上ある人であれば厚生年金に加入することができます。
ただし、いわゆる「日雇い」の人や雇用契約が2ヶ月以内の短期契約の人の場合は上記の条件に合致する場合であっても厚生年金に加入することはできないので注意しましょう。
・個人事業主の人も「法人成り」で厚生年金に加入できる
厚生年金は「個人事業主」として活動している人は加入することができませんが、個人事業主の人が自分の事業を「法人成り(会社を設立すること)」して会社の役員となることで厚生年金に加入できます。
小規模な会社の場合、会社の役員とはいっても実態は従来通りの個人事業主であることが多いのですが、法律上は「勤め人」という扱いになるため厚生年金に加入できるようになるという訳です。
◎厚生年金は勤務先会社が保険料を半分払ってくれている
次に、保険料の支払い方の違いについて確認しておきましょう。
・国民年金の保険料支払い
国民年金は加入している人が自分で支払いの手続きを行います。
毎月納付書を使って支払う方法の他、口座振替によって自動引き落としで保険料を支払うこともできます。
国民年金の保険料は年金制度に加入している人が自分で全額を負担する必要があります。
平成29年度の厚生年金保険料は収入金額がいくらであっても月額16900円です。
・厚生年金の保険料支払い
厚生年金の保険料は、勤務先の企業と保険に加入している人の両者が折半(2分の1ずつ負担すること)して負担します。
つまり、保険料の半分は会社が払ってくれるということですね。
厚生年金の保険料の金額は、勤務先から受け取る給料が多くなるほど高くなります。
具体的には厚生年金の「保険料額=標準報酬月額×保険料率」で計算されます。
標準報酬月額というのは、例えば「29万円〜31万円」というように、計算がやりやすいように便宜的に設定されている数字のことです(つまりお給料が29万円の人と、31万円の人は保険料の計算では同じように扱われるということです)
厚生年金の保険料率はほぼ毎年改訂されますが、平成28年10月分以降は18.182%(折半額で9.091%)です。
お給料の金額が30万円の人は、保険料は会社との合計額で54546円、折半額で27273円となります。
◎老後にもらえる金額の比較
国民年金、厚生年金ともに、年金制度は老後に生活していくために若いうちに保険料を支払っておくというものです。
また、厚生年金は国民年金に上乗せとして加入するものなので、厚生年金に加入している人は国民年金にも加入していることになります。
そのため当然厚生年金に加入し続けた人の方が国民年金に加入し続けた人よりも将来的にもらえる金額は多くなります(もちろん、現役のときに支払う保険料は厚生年金に加入している人の方が多いです)
もらえる金額の目安ですが、国民年金の場合は40年間全納した人で約80万円、厚生年金はお給料の平均額が30万円で40年間加入した人の場合は108万円を受け取れます。
<まとめ>
以上、「年金の仕組みっていまいちよくわからない…」とお悩みの方向けに、国民年金と厚生年金の違いについて解説させていただきました。
本文でも解説させていただいたように、サラリーマンは厚生年金、個人事業主や学生は国民年金、理解しておいて大きな間違いはありません。
アルバイトや非正規雇用の方の場合は厚生年金に加入したいところですから、勤務先によって積極的に加入の手続きをしてくれる場合とそうでない場合があるので注意しましょう。
もちろん、必要な条件を満たしているのであれば厚生年金に加入するのは労働者としての権利ということができますが、実際に厚生年金に加入するためには必要な手続きを行わなくてはならないためです(加入後にはあなたの厚生年金の保険料の半分は会社が負担することになります)
現在自分が加入している年金がどこなのか、何年ぐらい加入していて将来的にいくらぐらいの年金が受け取れるのかということを知りたいという方は、管轄の年金事務所に相談してみると良いでしょう。